伊藤潤二の漫画は、憂国のラスプーチン3巻以降以外は、ほぼ揃えているくらいの大ファンです。
(いつも伊藤潤二先生と呼んでいますが敬称省略)
新刊「人間失格」が傑作なのでオススメします。
精密な筆致は未だに衰え知らずで名人芸の領域で惚れ惚れします。凄いとしか言いようがありません。
太宰治の「人間失格」を読んだのが随分前だったので、だいたい話を忘れてしまっていて丁度良く新鮮な気持ちで読めました。
ちなみに漫画の1巻を読み終えたら、続きが気になってしまい、青空文庫で再読しました。(やはり傑作でした)
漫画の内容ですが、だいたい原作通りに話が進みますが、原作では抑えめな表現でさらっと説明しているような反道徳的な部分を強調し、オリジナルストーリー要素も想像を広げて描いています。それがまた良いスパイスとなり、この名作を漫画化する意義があるのかなと思います。
伊藤潤二の「人間失格」のココが凄い
自分なりにすごいと思ったところを3点挙げてみます。
①丁寧な描き込み
一コマ一コマじっくり隅々まで見て下さい。小さなコマにもかなり情報が詰め込まれています。昭和初期の町の様子や人々の服装が丹念に描かれ当時の雰囲気が画面から立ち昇るようです。
②キャラ全般の顔がイイ
主人公大庭葉蔵ほか男性陣の顔の描き分けと、伊藤潤二の本領発揮な所ですが女性の描き分けが本当にうまいのです。美人と普通と不細工の差がはっきりして分かり易いです。
あと美人でもキレるとめちゃくちゃこわい顔になったりして全然美人じゃなくなります。こんな顔だった?というツッコミ入れたくなります。怖い女性を描かせたら日本一。
③話の展開が早い
原作も短いので、漫画も変に話を引き伸ばすような所はなくて、さくさくと進みます。ですが、グロテスクに見せるとこは徹底的にグロいので、伊藤潤二らしさが出ています。
原作の文章そのまんまをなぞると漫画的なホラー要素が少ないので、結構脚色されていますが、違和感なく話に溶け込ませていて良いですね。
さいごに
漫画版主人公の性格が、小説と比較すると少し図々しい感じです。人に何を言われても反論できずニヤニヤして、挙動不審な感じ、いわゆる道化感がもっと出ていても良いかもなあと。(だんだん道化感が減っていくような気がしました)
それにしても原作のもつ退廃的な雰囲気をよくぞここまで表現できるものだと感動してます。これを上回る漫画化は今後出てこないこないのではないかと!
ただし雑誌掲載時の巻頭カラーページも再現してくれたらもっと嬉しかったなと思いました。2巻が待ち遠しいです。
「伊藤潤二研究 ホラーの深淵から」も発売になりましたね。まだ購入していないのですが、絶対購入します。
コメントを残す